2025年7月27日、ついにイチロー選手がクーパーズタウンでの野球殿堂入りスピーチを行いました。
多くの人がテレビやSNSでその感動の瞬間をご覧になったのではないでしょうか。
イチロー選手らしい、ウィットに富んだアメリカンジョークと、これまで支えてくれた人々への感謝の言葉。
スピーチは専属通訳のアレン・ターナーさんと共に準備されたと思われ、英語も完璧で自然、ユーモアの間の取り方も見事でした。
この記事では、スピーチの中から印象的なフレーズをいくつかピックアップして、英語表現と共に解説していきます。
(※筆者は野球に詳しくないため、登場する野球関係者の説明は割愛しています。)
スピーチの冒頭:イチロー流ジョークで幕開け。
“Today, I am feeling something I thought I would never know again. For the third time, I am a rookie… As I look over here now and see men like Rod Carew, George Brett and Tony La Russa, I realize I’m a rookie again. … But I am 51 years old now — easy on the hazing!”
「今日は、もう二度と味わうことはないと思っていた感覚を味わっています。これで三度目の“ルーキー”です……ロッド・ケアーさん、ジョージ・ブレットさん、トニー・ラルーサさんのような方々を前にして、改めて自分がまた“新人”になったと実感しています。……でも僕はもう51歳ですから、新人いじりはほどほどにお願いします笑!」
・I thought I would never [do/know/feel] again
=「もう二度と~することはないと思っていた」→ 感情の回帰を印象づける表現
・rookie=新人。MLBでも定番の言い回し。
・easy on ~=「〜は控えめにしてね」。
・hazing=新入生・新人への「洗礼」。ややネガティブだが、文脈によっては冗談として使える。
会場も笑いに包まれます。さすがイチロー選手。
” People often measure me by my records. Three thousand hits. Ten Gold Gloves. Ten seasons of 200 hits. Not bad, huh? But the truth is, without baseball, you would say this guy is such a dumbass. “
「僕は記録でよく評価されますね。3000本安打、10年連続ゴールドグラブ、10シーズン200安打…まあまあ悪くない数字じゃないですか? でも正直言うと、野球がなかったら、「この人ただのバカじゃん」って思われてたでしょうね。」
measure someone by ~:「〜によって人を評価する」
Not bad, huh?:「まあ、悪くないでしょ?」→ カジュアルな言い方
dumbass:俗語で「間抜け」「アホ」だが、ユーモアや親しみを込めたニュアンスもある
“Three thousand hits or 262 hits in one season are two achievements recognized by the writers. Well, all but one of you. By the way, the offer for the writer to have dinner at my home has now expired. “
「3000本安打やシーズン262安打といった記録は、記者達にも認められた実績です。
ー1人を除いて。ちなみに、その方へのディナー招待はもう期限切れです。」
all but one:「1人を除いて全員」
the offer has expired:「(オファーの)有効期限が切れた」
⇨ 1票足らずで、満票での殿堂入りを逃したイチロー選手。
その時の記者会見で、「投票しなかった記者を自宅に招待して一緒に食事したい」と言ったことに対してのジョークです。
イチロー選手の ”expired (期限切れ)” の言い方がまた最高で、このジョークに立ち上がって拍手する観客も見受けられます😁
“If you consistently do the little things, there is no limit to what you can achieve.
Look at me. I’m 5’11 and 170 pounds.
When I came to America, many people said I was too skinny to compete with bigger major leaguers. The first time I ran ran out on the field, I was in awe of the competition . But I knew if I stuck to my beliefs about preparation, I could overcome the doubts even of my own.”「小さなことをコツコツと続ければ、達成できることに限界はありません。
僕を見てください。身長180センチ、体重77キロです。
アメリカに来たとき、多くの人が「メジャーの大柄な選手たちには細すぎる」と言いました。
初めてグラウンドに走り出たとき、メジャーの選手の迫力に圧倒されました。
でも僕は、準備に対する自分の信念を貫けば、周囲の疑念―そして自分自身の不安さえも乗り越えられると信じていました。」
consistently = 「一貫して」「継続的に」
ran out on the field = 「フィールドに走って出た」→ 試合に初めて出場した瞬間
in awe of ~ = 「〜に圧倒された」
overcome the doubts = 「疑念を乗り越える」
“If I could rewrite that essay today with what I know now, I would have used the word goal instead of dream. Dreams are not always realistic, but goals can be possible if you think deeply about how to reach them. Dreaming is fun, but goals are difficult and challenging”
「子どもの頃「夢」として書いた作文を今書き直せるなら、『dream(夢)』の代わりに『goal(目標)』という言葉を使っていたでしょう。夢は必ずしも現実的とは限りませんが、目標は「どうやって達成するか」を深く考えれば実現可能になりえます。夢を見るのは楽しいけれど、目標を立てることは困難で挑戦的です。」
イチロー選手らしいメッセージです。
“And to the Miami Marlins. I appreciate David Samson and Mike Hill. for coming today. Honestly, when you guys called to offered me a contract in 2015… I had never heard of your Team.”
「それから、マイアミ・マーリンズの皆さんへ。今日来てくれたデビッド・サンプソンさんとマイク・ヒルさんに感謝しています。正直に言うと、2015年にあなたたちが契約のオファーをくれたとき…あなたたちのチームのことを聞いたこともありませんでした。」
I appreciate 人 for ~は、「~してくれてありがとう」
I had never heard of your team. 2015年時点でマイアミ・マーリンズを聞いたことがなかった、と言っているので “have” ではなく”had” の過去完了形を使っています。
会場はまた笑いに包まれました。
そして最後にこれまで支えてくれた妻の弓子さんに、感謝を述べています。
ここの部分に感動したというコメントも多くみられました。
“There was criticism and negativity. Someone even said to me, ‘Don’t embarrass the nation.’
The person who supported me the most was my wife, Yumiko.
It would only be natural if she had that too, but she never never made me feel them.
All of her energy was focused on supporting and encouraging me for 19 seasons in Seattle, New York, and Miami.
She made sure that our home was always happy and positive. I tried to be consistent as a player, She’s the most consistent teammate I’ve ever had.”「日本人初の内野手として渡米したとき、批判や否定もありました。
中には、「国の恥になるな」とまで言った人もいました。
そんな中で一番支えてくれたのは、妻の弓子です。彼女だって(不安や否定的な気持ちを)感じていたとしてもおかしくなかったと思いますが、一度もそれを私に感じさせませんでした。
シアトル、ニューヨーク、マイアミの19シーズンを通じて、僕を支え、励ますことだけに全力を注いでくれました。
いつも、家庭が明るく前向きな場所であるように配慮してくれていました。
僕は選手として安定したパフォーマンスを目指してきましたが、妻は僕にとって最も信頼できるチームメイトでした。」
It would only be natural if…=「もし〜だったとしても、それは当然のことだ」
She never never made me feel them:ここでの「never never」は意図的な強調。通常は一度の “never” で良いですが、感情の強さを示すため繰り返されています。
Consistent は「ブレない、一貫した」:アスリートがよく使う表現で、「常に一定のパフォーマンスを出す」というニュアンス。
弓子
さんを”チームメイト”とたとえるのが、英語表現ぽくて且つ、真面目なイチロー選手っぽい。
言葉に感情を乗せてスピーチをしているので、聞きやすくて記憶に残りやすいスピーチでした♪
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